愛を求める女性の平凡な日常に
芽生えたプライドと裏切りの底力

1950年代のコニーアイランド。レストランで働くウエイトレスのジニーは、回転木馬の操縦係を務める再婚した夫のハンプティ、そして自分の連れ子のリッチーと、遊園地の中にある観覧車が見える部屋で暮らしている。実は彼女は夫に隠れて、監視員のアルバイトをしているミッキーと付き合っていた。平凡な毎日に嫌気がさしていたジニーは、彼との明るい未来を夢想していた。そんなある日突然、音信不通になっていたハンプティの娘キャロライナが現れる。かつて駆け落ちし結婚したギャングの元夫から逃げているという。それを機に、錆びていたに事情が徐々に狂い始める。

ジニーは今でもドロップした女優のキャリアを引きずり、一緒に寝食を共にするだけの愛のない夫から、若くロマンティックな監視員に未来を見出す。また、元夫のギャング仲間から追われるハンプティの娘キャロラインは、父親の愛を取り戻し、自立を目指す。2人の女性は過去にとらわれながら愛情と自尊心をみなぎらせていくが、ジニーはやがてそれを嫉妬の火にくべてしまう。日常的な秘密が些細なすれ違いを生み、歯車が狂っていく様子はおもしろくもあり、少し怖い。グイグイ引き込まれる展開を作るウディ・アレンの手腕と、ジニーを演じるケイト・ウィンスレットの圧倒的な演技力に脱帽だ。

タイムスリップしたような幻想的な舞台セットの中で繰り広げられるのは、選択と赦しで彩られていた切ない悲劇だ。監督のウディ・アレンは言う。「観覧車からの眺めは壮観だが、いつも同じ場所を回転しているだけで、どこか別の場所にいくことはできない」。人は常に人と生きていくために、いくつかの道の中から1つを選ぶ。そして衝突し、赦し赦されて次の分岐点に着く。その現在地で道しるべになるのが、自分の過去への執着か未来への空想だ。果たして、それぞれは同じ場所に閉じ込められたままなのか。ゆっくりと進み続ける円運動から脱却して新たな道に進むのか。男女で意見が分かれそうな衝撃のラストは…デートで見に行って感想を語り合うのもアリ!(ケンカしないでくださいね…)


『女と男の観覧車』

監督:ウディ・アレン
出演:ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジュノー・テンプル、ジム・ベルーシ
2018年6月23日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開
© 2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

映画『女と男の観覧車』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi