次々と襲い掛かる困難の中で対峙する
過去と未来と、あるべき今の自分

テロ組織の最高幹部を暗殺するミッションに失敗した、若きアメリカ兵士・マイクは、相棒のトミーと逃げる途中で、3000万個以上の地雷が埋まる地雷原に迷い込んでしまう。無惨にも目の前でトミーが爆死した瞬間、自らも地雷を踏み、一歩も動けない絶体絶命の窮地に陥ってしまう。援軍と連絡も途絶え、救出まで52時間。その間、容赦なく襲ってくる自然の脅威と、封印してきた過去のトラウマからくる激しいフラッシュバックに苦しめられる。

これまでさまざまなタイプのスリラーが存在してきたが、今回は斬新な”ワン・シチュエーション・スリラー”。まさに周りには砂漠以外何もなく、地雷とともに独り広大な密室に置き去りにされる。たとえ重厚な戦闘服に身を包んでいようとも、極限状態に陥った精神は丸裸も同然だ。スリリングな展開は、もちろん迫り来る外的な危機もあるが、それ以上に幾重にも重なるマイクの内側にあるちょっとしたひずみによって加速する。永遠とも感じる時間の中で、じきに現実と幻覚の間をさまよい、己との孤独で壮絶な戦いを強いられる。彼の心の中というもう一つの”ワン・シチュエーション”の絶妙な描き方、魅せ方が奏功し、一瞬も見逃せない、手に汗握るストーリーテリングを実現している。

見どころとして、トラウマが原因となるフラッシュバックが現実と激しく複雑に絡み合い、精神的に翻弄される生々しい姿が描かれるが、演じるアーミー・ハマーが発散する演技力に圧倒される(最近では『君の名前で僕を呼んで』の大学院生オリヴァーを演じ、ゴールデングローブ賞などにノミネートされた)。彼は出演が決まると大量の資料を読み、海軍に問い合わせて24時間以上の静止状態がもたらす身体への負担や、過去の出来事が精神に及ぼす影響を聞くなど、徹底的に役柄について研究をしたという。何もしないことが生きる道となってしまった彼は最後に未来への一歩を踏み出せるのか。予想もしなかったラストは……おっと、ここでは地雷を踏まないでおこう。


『ALONE/アローン』

監督:ファビオ・レジナーロ、ファビオ・グアリョーネ
出演:アーミー・ハマー、アナベル・ウォーリス、ジェフ・ベル
2018年6月16日より新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田ほか全国公開
© 2016 Mine Canarias Aie Roxbury Enemy Sl Sun Film Srl Mine Film Llc
PG-12

映画『ALONE/アローン』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi

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