ビリー・クリスタルとメグ・ライアンで綴る不朽の名作『恋人たちの予感』を紹介! ホリデーシーズンを盛り上げる今作をふたりはどう読み解くのか?
恋人たちの予感
--今回取り上げるのは、1989年公開の『恋人たちの予感』です。
高橋芳朗(以下、高橋):これは“ザ・クラシック”な作品ですね。会話劇としても完璧。では、まずは簡単にあらすじを。「大学を卒業したばかりのハリー(ビリー・クリスタル)とサリー(メグ・ライアン)。初対面だが経費節約のため、同じ車でニューヨークへ行くことに。道中、事あるごとにふたりは意見を衝突させ、初めての出会いは最悪のものとなった。それから5年後、ばったり空港で再会。またもや口論になるが、関係に少し変化が。そしてさらに5年後、何でも話せる異性の友人関係に発展するが…」というお話。
ジェーン・スー(以下、スー):かなり久しぶりに観ました。公開当時と価値観は変われど、男女の物語としては普遍性のあるものだと思った。未見の人はお早めに是非!
高橋:現在に至るラブコメ映画のフォーマットはほぼここでできあがっていると言っていいのでは。ある意味、ラブコメ映画のイメージは『恋人たちの予感』の登場以降さほど変わっていないようにも思えてくる(笑)。
スー:特に、最悪の第一印象から掛け替えのない人に至るまでの流れは、これが教科書と言ってもいいかも。ラブコメ映画におけるマンハッタンの使い方も完璧だしね。これこそ概念としてのニューヨーク。秋のマンハッタンはもはや映像の暴力だわ。あれで大体の感情は薙ぎ倒せる。
高橋:これがラブコメディに新しい感覚を持ち込む作品になることは、おそらく作り手側も自覚的だったはず。というのも、中身はセクシャルなトピックに踏み込むことも辞さない男女の明け透けな恋愛話が飛び交う革新的な内容なのに、ウディ・アレン調のオープニングクレジット然り、ジャズスタンダードで固めたハリー・コニック・ジュニアのサウンドトラック然り、「側」は割とオーソドックスな作りなんだよね。これは明らかに確信犯かと。
『恋人たちの予感』
監督:ロブ・ライナー
脚本:ノーラ・エフロン
出演:ビリー・クリスタル、メグ・ライアン、キャリー・フィッシャー、ブルーノ・カーヴィ
公開:1989年12月23日(日本)
製作:アメリカ
Photos:AFLO
ジェーン・スー
東京生まれ東京育ちの日本人。コラムニスト・ラジオパーソナリティ。老年の父と中年の娘の日常を描いたエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』がドラマ化。TBSラジオ『生活は踊る』(月~木 11時~13時)オンエア中。
高橋芳朗
東京都出身。音楽ジャーナリスト/ラジオパーソナリティー/選曲家。著書は『ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック』『生活が踊る歌』など。出演/選曲はTBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』『アフター6ジャンクション』『金曜ボイスログ』など。