笑えないユーモアと身にしみる毒で
人間社会のリアルを表現する

現代美術館のキュレーターであるクリスティアンは、地面に正方形を描いた「ザ・スクエア」という作品を発表する。その枠の中では「全ての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という、「思いやりの聖域」をテーマにした参加型のアートで、現代社会におけるエゴや貧富の格差にフォーカスする狙いがあった。ある日、クリスティアンは携帯電話と財布の盗難に遭い、その犯人探しを敢行したことを皮切りに、自分の身を脅かす不測の事態が巻き起こる。

人は集団生活をする以上、本音と建前を持つ。そのほか正直と嘘、見栄と卑下、虚勢と自制なども含めて、人間関係をスムーズに行うための潤滑剤なのだ。どう見られたいか、どう見られなきゃいけないかと、自分のキャラや立場でそれらを使い分ける。一方でそれは、思考と行動が分離される、社会的動物の少々厄介な部分でもある。本作では、そんな2つの側面の間に横たわるジレンマや、それがもたらす顛末を、とびっきりの毒とユーモアで描いていく。

本作のアイデアは、実際にリューベン・オストルンド監督たちが行ったアート展示「ザ・スクエア」をから来ており、劇中で発生する事象や事件のいくつかは、監督が見たこと、経験したことを交えている。物語はすべて主人公自身の選択で展開していくため、観客は「これが自分だったらどう行動するか…」とクリスティアンの身に置き換えて感情移入せざるをえない。

「周囲に他人が存在する時、責任の拡散が勝り、被害者を助ける行動が抑止される」という”傍観者効果”について監督は言及する。人は集団生活の中で──リアルでもSNSでも──あくまで傍観者のままなのか。2017年の第70回カンヌ映画祭パルムドール(最高賞)を受賞し、数々の映画祭を席巻したとおり、世界が受け止め、心に刺さった衝撃の結末を体験してほしい。


『ザ・スクエア 思いやりの聖域』

監督:リューベン・オストルンド
出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー
2018年4月28日より全国にて公開
© 2017 PLATTFORM PRODTION AB / SOCIÉTÉ PARISIENNE DE PRODUCTION / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / COPRODUCTION OFFICE APS

映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi