2019.02.25

これぞアート! 日産GT-R、50台限定の特別モデルが登場

NISSAN GT-R50 by Italdesignは、日本の先進技術とイタリアのクラフツマンシップが結集した稀有なモデルだ。自動車史に間違いなく残る芸術的な一台が生まれた背景を、日産デザインの舵を取るキーマンに聞いた。

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NISSAN GT-R50 by Italdesign

高性能バージョンであるGT-R NISMOをベースに開発。手作業で組み立てる3.8ℓのV型6気筒ターボエンジンの最高出力は720ps、最大トルクは780N・mに達する見込み。細部はオーダー可。価格は90万ユーロから。

チャレンジする精神こそ GTーRのDNAなのです



このクルマはスーパーカーというよりドリームカーだ。イタリアの名門カロッツェリア、イタルデザインと日産が手を組み、日本が誇るスーパースポーツであるGT-Rを再構築した。

エンジンにはレースのノウハウを注入し、最高出力はベース車の600psから720psへと大幅アップ。超高速走行を安定させるためにリアには可変式のウイングを配置し、風を切り裂くためにルーフを5センチ以上も低めた。足回りも一新され、カーボンの空力パーツを各部に採用したボディは、モンスターのすごみを感じさせるとともに、現代アートのようでもある。

夢のクルマが生まれた背景を、同社のグローバルデザインを統括するアルフォンソ・アルバイサ氏に尋ねた。

「イタルデザインからアプローチがあり、まず最初に彼らのコンセプトカーを見せてもらいました。GT-Rは誕生50周年、そして実はイタルデザインも創立50年を迎えることがわかり、GT-R50周年を祝う特別なモデルを50台つくることになったんです。内外装のデザインはロンドンとカリフォルニアの日産のデザイン拠点が担当、設計と生産がイタルデザインです」


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丸い4灯テールランプはGT-Rの大切なアイコン

「GT-Rらしさを保つために、変えてはいけない部分もありました。例えば丸いテールランプです。ただし従来と同じでなく、先進性を表現するために内部を空洞にしています」

特別なGT-Rをデザインするにあたって、アルフォンソ氏の頭の中には明確なイメージがあったという。

「GT-Rとは従来の名車とは異質の美しさをもつモデルで、チャレンジする精神こそがDNA。1964年の第2回日本グランプリで、GT-Rの前身のスカイラインGTが純粋なレーシングマシンであるポルシェ904を抜いた瞬間は、輝かしいイメージとして残っています。このクルマを初披露した英グッドウッドには車高の低い他社のスーパーカーもありましたが、そこにスクエアで重厚でソリッドなGT-Rが登場して、誰もが驚きました。このクルマには過去のGT-Rのモチーフをちりばめていますが、GT-RのDNAとイタリアのアートが融合していることも高く評価されました。加えて、少しアニメっぽかったりゴジラっぽい感じやハイテクな雰囲気がモダンな日本の美を表現していることも、支持された理由でしょう」

入社以来、日産一筋。同社の歴史をリスペクトしながら新しいデザインに挑む姿勢は、日本人より日本人らしい。そんなアルフォンソ氏が考える、未来の日産のデザインとは?


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大胆に使ったゴールドは50周年を祝福するカラー

「フロントのゴールド部分はオーダーの際に好きな色を選べます。僕はシャイなので、塗装前のカーボンのマットな黒を選ぶかな(笑)。魚の口みたいな形状も気に入っています」



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素材にカーボンを用いたエッジーなステアリング

「インテリアにもすごく自信があります。ルーフがオリジナルのGT-Rより低くて、色や意匠も運転に集中できるようになっています。運転席から降りたくなくなりますよ(笑)」

「私たちは日本の“間”というものが好きです。クリーンでシンプルで、ミニマリズムに近い空間ですね。同時に、品質の高さを意味する“整”という概念も大事で、こういった言葉を鍵にデザインの議論をしています。“傾(かぶ)く”もいい言葉ですね。日本人は異質な文化や考えを柔軟に受け入れてきましたが、このクルマも異質で、普通ではないことがわかっていただけるでしょう」

シンプルで上質、同時に多様な考えを受け入れるデザインを目指すというアルフォンソ氏の話を聞いていると、日本から発信される新たなグローバルデザインへの期待は膨らむばかりだ。


「間」と「整」、そして「傾(かぶ)く」 そんな世界観でデザインしています

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アルフォンソ・アルバイサ 1964年生まれ。NYのプラット・インスティテュート卒業後’88年に日産入社。アメリカとヨーロッパのデザイン拠点を経験した後、2012年にデザインディレクターに就任。現在はグローバルデザイン担当の専務執行役員を務める。

日産自動車
TEL:0120-315-232



Movie:Atsushi Tanizawa[TOPGEAR WORKS]
Photos:Tetsuya Toyoda
Interview&Text:Takeshi Sato

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