2025.12.26
最終更新日:2025.12.26

メルセデス・ベンツ Gクラスで幼少期を過ごした長野・松本の別宅へ【おしゃれな大人の愛車とウィークエンド・プレイス】

日々のせわしなさを忘れられる場所に出かける週末こそ、クルマがいい。効率が問われる時代に、運転するだけの時間はもったいないと思うかもしれない。けれど、次第に景色が風光明媚な自然に変わり、空気が澄んでくるとおのずと心も整ってくる。パーソナルな空間に身を置きながら、贅沢な時間を過ごす5組の大人たちを訪ねた。

Mercedes-Benz G-Class / 尾崎雄飛さん(SUN/kakke デザイナー)

Mercedes-Benz G-Class

幼少期を過ごした長野・松本で
自分の心をリセットする

昭和30〜40年代に、上高地へと向かう道として計画された三郷スカイラインは、開通することなく途中で途絶えている。Gクラスが一台通れるかどうかの険しく荒れた道を登り続けること20分。急に景色が開け、安曇野の絶景が現れた。

リビング

リビングの壁には、ジョージ・ネルソンの棚(CSS)が。レザーソファはブラジルのパーシヴァル・レイファーのヴィンテージ。

三郷スカイラインの展望台から望む、松本市の絶景

三郷スカイラインの展望台から望む、松本市の絶景。

光が入る寝室の隅

光が入る寝室の隅は、昼寝ポイントにも。

民芸にまつわる書籍や、安曇野の写真集

書棚には民芸にまつわる書籍や、安曇野の写真集も。

Mercedes-Benz G-Class 2
チェックのシート
旧型の部品を用いたインパネ
大型ミラー

チェックのシートや旧型の部品を用いたインパネ、大型ミラーなど、クラシカルな意匠にこだわった贅沢な限定仕様車。

工藝マエストロ

中心街にある「工藝マエストロ」は、陶磁器や漆器などが揃う。「自宅の箸やお椀も買っています」。

「我山」のソースかつ丼

尾崎さんが絶品とうなる「我山」のソースかつ丼。この日も平日ながら、昼には売り切れる大盛況ぶりだった。

アンティークショップ「guild Bekkan」

行きつけのアンティークショップ「guild Bekkan」。店主が買いつけたヨーロッパ骨董と、ブラウンのヴィンテージオーディオが並ぶ独特な空間だ。

北アルプスがよく似合う特別仕様のGクラス

 サンカッケーやヤングアンドオルセンを手がけるデザイナーの尾崎雄飛さんは、2019年から、幼少期の多くを過ごした長野県松本市にマンションを借りている。

「母方の実家が松本駅の裏にあって、祖母が喫茶店を営んでいました。住んでいた名古屋から、よく家族で訪れましたね。景色もそうですが、水が驚くほどキレイで。その環境の違いに衝撃を受けて、幼い頃からすっかり魅せられてしまったんです。そして年を重ね、二拠点生活をするなら松本に家を借りようと」

 今は夫婦でふた月に一度は通う生活を送っている。目まぐるしい日々の生活で疲れた心身を癒やすのにはうってつけの場所だそう。 

 そんな尾崎さんはクルマ好きでもあり、1960年代のジャガー Mk・Ⅱなど、複数のクルマを所有している。その中でもよく乗っているのが、オールブラックのメルセデス・ベンツ Gクラス。初代の意匠を再現した「G 300 CDI プロフェッショナル」(2013年式)という稀少車だ。

「遠乗りはGクラスが多いですね。後部座席が独立した仕様で、あまり快適とは言えませんが、慣れればそれほど疲れません」

 都内を出る朝、日が差し込む車内では、インストゥルメンタルジャズのオールドナンバーをゆったりと流し、自宅でいれたコーヒーを飲みながら中央道を北上する。エンジンとオフロードタイヤの音は聞こえてくるが、走っている感じがして耳障りではない。

「都内からは3時間近くかかりますが、広大な安曇野の田園と雄々しい北アルプスを見ると、これにかなう風景はないと今も思います」

 北松本にあるマンションの一室は、こだわりのヴィンテージ家具で彩られている。

「事務所や自宅と同じように、好きなミッドセンチュリーを中心に、ブラジリアンファニチャーや北欧の椅子を置いています。松本は民芸が有名ですが、代表的な松本民芸家具の色はとても濃いんです。それに合わせて、松本の自宅はローズウッドやブラック系の家具で揃えています。好きな本を読み、妻と料理をするなど、なるべく仕事はしないようにして。新鮮な井戸水で割ったお酒を飲みながらうたた寝する夜が、最高に気持ちいいんです」

 食事は外でとることも多い。尾崎さんが松本に来るとよく訪れるのが、ソースかつ丼の「我山」だ。程よく脂がのった厚切りの柔らかなかつと、甘すぎないソースが特徴で、名古屋出身で味噌かつの旨味を知り尽くす尾崎さんが絶品と舌鼓を打つ。

 そして松本といえば民芸。家から徒歩圏内の「ちきりや工芸店」「工藝マエストロ」「松本民芸家具」などの名店を散策することも多い。

「『ちきりや』は、松本民芸運動の中心人物である丸山太郎さん(1909年生)の生家。松本はそうした古い町並みが残っているのも魅力なんです。余談ですが、同じく松本の民芸運動の立役者である池田三四郎さんの書も、いくつか大切に持っています」

 そして、アンティークショップ「guild Bekkan」も尾崎さんの行きつけ。新入荷のブラウンのヴィンテージアンプが、「自宅のオーディオとマッチする」と細かい仕様を尋ねる。この日は、注文していた姿見をGクラスでピック。そして気づけば、あたりは暗く冷え込んできた。東京と比べて、松本はゆったりと時が流れている。

「実は45歳までに土地を買って、店舗付きの家を建てようと思っていました。で、今もう45歳(笑)。実現するのはもう5年くらい先かな。最後に住む場所を聞かれたら、僕は間違いなく松本を選ぶでしょうね」

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