
ヒョンデが手がけるコンパクトSUVの電気自動車「KONA(コナ)」。その特別仕様車「KONA Mauna Loa(コナ マウナロア)」の試乗ツアーで、われわれは新島へと向かった。竹芝桟橋から高速船に乗り込み、伊豆諸島へ。コナ マウナロアでめぐる新島ドライブ旅が始まる――。

新島は、首都圏から南へおおよそ160km、伊豆諸島のほぼ中心に位置する。伊豆諸島は太平洋に位置する東京都の島嶼部で、無人島を含めるとその数は100以上になる。竹芝桟橋から高速船に乗ること2時間20分、伊豆大島と利島を経由して、ようやく新島に上陸した。
船着場で対面したコナ マウナロアの第一印象は「おぉ、かなり本気な雰囲気!」ということ。ロボコップやアイアンマンあたりを連想させるフロントマスクのヴィジュアルが物語るように、先進的で未来的なイメージが強いコナだが、マウナロアはレジャーでの利便性を高めた専用アクセサリーを採用するなど、一転して力強い装いで、日常からアウトドアまでさまざまなシーンで存在感を発揮する。

マウナロアというのは、ハワイ語で「長い山」を意味する言葉であり、ハワイの壮大な山々をテーマに、自然に溶け込むデザインでありながら市街地でもスマートに走行することができるモデルとして名付けられた。専用色となるミラージュグリーンのボディカラーに加え、前後のバンパーやホイールアーチは艶を抑えた特別なブラック塗装が施され、凹凸を持った独特な仕上げと相まって、だいぶワイルドな印象だ。

ひと通り操作方法について説明を受けたら、いざ試乗! ベースとなるのは、シリーズの中で最も一充電走行距離が長いVoyage。最大容量64.8kWhのバッテリーを搭載し、一充電走行距離は625kmになる。パワートレインも申し分なく、最高出力&最大トルクは204PS/255N・mとこのクラスのEVとしては十分。重量は1.7トンあるものの、それを感じさせることはなく軽やか。あいにく島内にハイウェイは存在せず、高速走行を楽しむことは叶わなかったが、長めの直線道路でアクセルを踏み込むと、スーッと伸びやかに加速して気持ちがいい。もちろん、直進安定性は言うことなし。

新島の面積は約23.64平方キロメートルで、周囲はおよそ41.6km。島は大まかに南北に別れていて、島内をぐるりと一周する道路はないけれど、島の中心から南北の端までそれぞれ往復1時間ほどで走れてしまう。気の向くままに島内をドライブしていたら、間々下海岸のあたりで海のほうへと下っていく砂利道を見つけた。通常なら躊躇するけれど、悪路での走破性の高いテレーンタイヤを履いたコナ マウナロアなら大丈夫。ゆっくりとクルマを進めていくと、仮面ライダーなどでよく戦いの舞台になる採石場のような場所に出た。背後には切り立った崖が迫り、間近には青い海。その中をコナ マウナロアが砂煙を巻き上げて走っていく。何だかCMになりそうだ。

きらきらと輝くコバルトブルーの海、亜熱帯植物が生い茂る豊かな森林、海岸線までせり出した岩山がつくり出すダイナミックな景観。新島をドライブしていて思ったのは、ハワイみたいだなってこと。山上の展望台や海岸沿いの道路、木漏れ日が差し込む木々のトンネルなど、美しく壮大な景色に出会うたびに、クルマを停め、撮影がスタートする。うん、これは画になる。新島の風景の中にコナ マウナロアはとてもマッチしていた。

エクステリアばかりに注目してしまったが、インテリアも秀逸。国内未導入の新色「セージグリーン2トーン」を採用し、エクステリアカラーとの調和を意識した色合わせに。さらに、シート生地にはベース車に設定のない本革を使うことでワンランク上の上質さを与えた。オフロード仕様と謳いながら、都市部でも十二分に使えるセンスがいい空間だ。そして、専用アクセサリーがまた魅力的。キャンプやハイキング用品などの積載を想定したルーフクロスバー、どんな天候でもタフに使うことができるラバー製のオールウェザーフロアマットやラゲッジマットを装備。レジャーシーンで大活躍すること間違いなしだ。

気づけばお腹はペコペコ。本村地区にある「みかさ」で遅めの昼食をいただく。ここは島の素材を使ったおにぎりをメインに、お惣菜や定食を提供する。頼んだのは、好きなおにぎり2個とお惣菜や汁物がセットになったおにぎり定食。特産品でもある明日葉の佃煮のおにぎりがおいしかった。余談だが、新島の名物といえばくさやがある。独特な香りと旨みは好きな人にとってはクセになるおいしさといわれている一方で、苦手という人も多い。名物は必ず食べることを信条にしているので、夕食時に訪れた居酒屋でトライしてみたが、うーん……好きになるにはだいぶ道のりは長いかな。地元の焼酎「嶋自慢」でなんとか流し込んだ。


話を戻す。おにぎり定食に大満足して店を出た後は、再びドライブ。まだ行っていなかった石山展望台と端々展望台を目指す。峠道も意外なほどパワフルに登るし、コーナーも鼻先がスッと入る感じがしっかりと感じられて、不安定な要素はない。走らせていて楽しいクルマだなとあらためて思う。

翌朝は早くから「湯の浜露天温泉」へ向かった。ここは古代ギリシャの神殿のような建物が目印の無料の露天風呂。24時間年中無休ということもあって、大海原に沈む夕日や満天の星空を眺めながらの湯浴みを楽しみに多くの人が訪れる。ただし混浴なので、水着着用がルール。あいにく我々は持ってこなかったので、足湯を楽しんだ。波の音をBGMに至福のリラックスタイム。
その後は、朝食を求めて地元のベーカリーへ。たまたま居合わせた地元のサーファーが、この後シークレットと呼ばれるサーフポイントに行くことを聞く。そこはその名の通り、かつては地元のサーファーしか知らなかった秘密のポイントで、2003年にサーフィンの世界大会が開かれたことで一躍有名になった。アクセス方法が面白く、波打ち際を延々とクルマで走って行くという。これはラッキーとばかりについていくことにした。

サーフボードを載せた先行車の後ろを走り、程なくして羽伏浦海岸まで下りる砂利道の入口にたどり着いた。しかし路面は思った以上に悪く、車高が高い4WDでないと厳しいため、残念ながら砂浜ドライブは断念。代わりに徒歩で羽伏浦海岸まで下りてみた。どこまでも続く白い砂浜に青い海、そしてそそり立つ大迫力の絶壁。この景色は本当に一見の価値あり。ここだけの圧倒的な風景だ。

羽伏浦海岸の絶景を堪能したのちは、旅のラストを締めくくるべくお土産屋さんへ。買ったのは、くさや……ではなく、島とうがらしと島焼酎。そうこうしているうちに、乗船の時間に。別れ際に港の駐車場で、新島の青い海とコナ マウナロアを向かい合わせるように並べてしばらく眺めてみた。自然との調和を大切にしたデザインは従来のEVのイメージを覆し、抜群の存在感を発揮している。実用性とデザイン性を兼ね備え、高品質でセンスもいい。都市部でもアウトドアでも乗りこなせるコナ マウナロアは本気でありだと思った。
Hyundai KONA Mauna Loa
コナに初めて設定された特別仕様車。シリーズの中で最も一充電走行距離が長いVoyage(WLTCモード625km)をベースに、オフロードテイストにカスタマイズ。日本限定30台で発売中。価格は4,950,000円。
https://www.hyundai.com/jp/kona-maunaloa