2026.03.25
最終更新日:2026.03.25

【おしゃれな大人のクルマ選び】ロードスターから大型SUVまで、マツダが考える「ひと中心のクルマづくり」の現場に潜入!

マツダ 車

広島県で創業したマツダは、2020年に創業100年を迎えた。コルク製造会社から商用車メーカーとなり、戦後は乗用車やロータリーエンジンを開発。長い歴史のなかで原爆の被害や経済危機などの多大な困難を乗り越え、独自のアプローチでクルマを送り出してきたマツダには、世界中に幅広い層のファンがいる。

スポーツカーからコンパクトカー、大型SUVまで手がける自動車メーカーは少なくはないが、マツダほどわかりやすく統一されたフィロソフィーとデザインをもつメーカーはまずない。どのモデルから見て乗っても、直感的に「あ、これがマツダ車だよね」と思えるフィーリングやデザイン言語を備えている。

その根底にあるのが「ひと中心のクルマづくり」。さらに「走る歓び」「人馬一体」といった言葉もマツダは掲げる。こう聞くと、スポーツカーに限った話と思うかもしれないけれど、マツダはすべての車種においてそれを意識し、実現している。

今回は、若手編集者を対象にしたマツダの体験ツアーに参加。広島に次ぐ拠点である、山口県の美祢試験場と防府工場を訪れた模様をリポートする。

CX-90にもロードスターの軽快さを感じる

山口宇部空港

羽田空港から飛行機に乗ること1時間半。山口宇部空港に到着した我々は、まずマツダ車が鍛えられる美祢試験場へと案内された。美祢試験場は20年前から使われているが、1972年から2006年までは、数々のレースが繰り広げられた名門サーキットだった。マツダによる買収後は、本コースのほかに、ワインディングを想定した外周路やテストドライバーを育成する広場など、複数のコースが設けられた。

サーキット

ピットに着くと、ロードスター、SUVのCX-5とCX-60、CX-80、そして北米専用車のCX-50、CX-90、さらには中国専用のEV、EZ-60が待っていた。海外専用車3台のメディア試乗は本邦初。乗りたい衝動を抑えながら、まずは「ひと中心のクルマづくり」について学ぶことに。

ドライビングポジションの重要性と、開発への反映について語る開発担当者
ドライビングポジションの重要性と、開発への反映について語る開発担当者。

我々ユーザーが「運転しやすくて楽しい」と感覚的に得られるインプレッションは、エンジニアによるロジカルな試行錯誤によって生み出されている。しかし、デジタル化やAI化が進む昨今においては、走行実験だけでなく、社会や生活者のビッグデータを用いたソフト面の改良の進化も必須となる。

そこで、マツダは弘前大学医学部とともに、人が運転時にどのような場面で幸せを感じるのか(運転の幸福度)について、ビッグデータをもとに研究している。将来的にはドライバーの感性をクルマが理解し、対話的なコミュニケーションを可能にすることで、運転初心者から高齢者まで、それぞれに合った運転支援のチューニングを実現させるクルマづくりを目指しているという。

そして楽しい運転感覚を得るためには、正しいドライビングポジション(ドラポジ)が不可欠と説く。マツダでは、リラックスした理想の運転姿勢を、人間工学に基づいて手足の節々まで分析して追究してきた。

インストラクターからドラポジのレクチャーを受ける
インストラクターからドラポジのレクチャーを受ける。車両はコンパクトセダンのMAZDA3。人馬一体の重要性は、なにもスポーツカーに限ったことではない。
アクセルペダルは全車オルガン式を採用
アクセルペダルは全車オルガン式を採用。アクセルとブレーキを踏む際にも、支点となるかかとがぶれず、また長距離運転による脛など脚への疲れも軽減される。

こうした開発の裏側を学んだうえで、前述した7台のマツダ車に一気に乗ってみる。それぞれ車格は異なるが、どのクルマからも、ステアリングの応答性の高さ、身のこなしの軽やかさが感じられた。そして何より、運転が楽しい。

ロードスターがダイレクトで楽しいのは当たり前だが、CX-60や北米向け大型SUVのCX-90からも、体躯の大きさを感じさせない軽やかな印象と一体感が得られる。運転の高揚感がどことなく似ているのだ。これには、大ぶりなSUVに「縦置きエンジン×後輪駆動」というスポーツカー譲りの好バランスなレイアウトを採用していることも大いに関係している。試乗したCX-90に関してもうひとつ言うと、新規開発の3.3ℓの直6ターボエンジン(340馬力)が抜群の加速性能とサウンドを秘めていた。国内未導入は惜しい…。

CX-80よりわずかに大きいCX-90(北米専用車)
CX-80よりわずかに大きいCX-90(北米専用車)。アーティザンレッドと呼ばれる深みのある赤が美しい。
EZ-60
EZ-60 内装
メディア試乗は本邦初となった、中国市場向けEVのEZ-60。長安汽車との共同開発だが、デザインはマツダによるもの。加速は上品で滑らかだが、ステアリングはかなりクイックだった。中国市場ではこのセッティングが受けるという。

そしてもうひとつ、我々は快適で楽しい運転をするためのキーワードを学んだ。それが「G(ジー)」、つまり「重力加速度」である。よくF1や戦闘機などの極限状態においてGは語られるが、当然ながら日常の運転の加減速やコーナリングでも発生する。Gを抑えてスムーズに走ることを、大広場のパイロンコースで実践した。

ロードスター
G-Bowlと呼ばれるGセンシングアプリ

G-Bowlと呼ばれるGセンシングアプリをロードスター(MT車)に取り付け、0.4G以上出さないように特設のパイロンコースを走る。これが結構難しく、0.4Gはステアリングを切りながらアクセルを優しく踏み足しても超えてしまい、「チーン!…」という情けない音が車内に響いた。「1回は鳴らしてもOK」というルールのもと、本番計測開始。長い直線はアクセル全開。次第に優しくブレーキングしてコーナーに入り、ステアリングはゆっくり戻しながら加速…とやや力みながらゴールした。

0.4G以上出さないように特設のパイロンコースを走る

1回はチーンと鳴らしてしまったものの、結果はなんと参加者16名中トップ! 日頃からモータースポーツに取り組んでいるだけに荷重には敏感なのだが、丁寧に速く走らせることはとても難しかった。

ドアとボディの隙間を2mmに詰めるこだわり

1980年代から稼働する防府の乗用車組立工場

その後、われわれは1980年代から稼働する防府の乗用車組立工場を見学した。マツダは国外にも複数の生産拠点をもっているが、すべてにおいて独自の「多車種混流生産」を実現している。通常はひとつのラインで一車種しか生産できないが、例えば防府工場ではCX-60、CX-70、CX-80、CX-90を同じライン上で製造している。こうすることで、思わぬ需要変動にも柔軟に対応できるという。

組み立てライン
AGVと呼ばれる無人輸送車を組み立てラインに配備させ、その上にエンジンや駆動系をはじめとするパワートレインを載せて合体させる。

生産現場では効率化だけでなく、「走る歓び」「人馬一体」への姿勢もうかがえた。車体の骨格を組み立ててからボディパネルを溶接する構造により、高強度、高精度なボディを実現。さらにはボディ側面の映り込みを追求すべく、ドアとボディの隙間を2mmにまで詰めることを自動化するなど、量産車にしてはとにかくこだわっている。開発段階から工場生産までじっくり学ぶことで、マツダの開発思想が一貫していることを実感できた。

CX-5
今回は対面が叶わなかった新型「CX-5」。欧州では導入が始まっており、日本と北米は今春から導入予定。

そして今春には、待望のミドルSUV「CX-5」の新型が日本に導入される予定で、先行予約も始まっている。軽快な走りと十分なユーティリティ、そして美しいデザインが手に入る一台は、ファミリーユースのUOMO世代にもぴったり。ひと中心のクルマづくりと、美しい魂動デザインの新しい成果を見られる日が待ち遠しい。

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