2月の雪深い新潟県・妙高高原で、ボルボEX30 クロスカントリーの試乗会が開かれた。理由は、「EV(電気自動車)は雪に弱い」という誤った認識を改めるためだという。その狙いどおり、EX30 クロスカントリーはさまざまなコンディションの雪道を、安定した挙動で粛々と駆け抜けてくれた。今回はそのスノードライブの模様をお届けしたい。
2025年の夏から加わったボルボ EX30クロスカントリーは、小型EVのEX30をベースに最低地上高を20mm引き上げ、専用の外装パーツでラフロードが似合う装いに仕立てられている。1990年代後半からボルボのステーションワゴンに加わり、人気を博してきたクロスカントリーの血を引くモデルだ。
一般に「車高が高いと悪路に強い」と思われがちだが、「最低地上高が高いと悪路に強い」と表現したほうがより正しい。たかが20mmと思われるかもしれないけれど、その効果は大きく、今回の試乗でも雪道の轍を気にすることなく走ることができた。
そしてもうひとつのポイントは、EX30が2輪駆動(後輪駆動)仕様もラインナップするのに対して、EX30クロスカントリーは4輪駆動のみとなる点。フロントとリアに配置されたそれぞれのモーターが前輪と後輪を駆動する。最低地上高が高いことにあわせて、悪路や滑りやすい路面で強みを発揮してくれるのだ。
全体を見渡してみると、全長4235mmという外寸は、トヨタのヤリス クロスよりわずかに大きい程度で、日本の道路事情でも扱いやすい。それでいながら存在感があるのは、フロントマスクや前後のタイヤを囲うフェンダー、さらにはテールゲートの一部をブラックアウトすることで、クロスカントリーのテイストを強調しているからだろう。
冒頭に記した通り、4つのタイヤに的確にトルクを配分する4駆システムとスタッドレスの組み合わせは、雪道でも常に安定した走りを見せ、不安の欠片も抱くことはなかった。試しに、安全が確認できる場所を見つけて、ドライブモードを「標準」モードからアクセル操作にシャープに反応する「パフォーマンス」モードに切り替えて、アクセルペダルを強く踏み込んでみる。すると一瞬だけキュッとタイヤが空転したものの、すぐに安定を取り戻して何事もなかったかのように走行を続けた。
この「パフォーマンス」モードはかなりパワフルで、ドライ路面の高速道路でアクセルペダルを踏み込むと、同乗者が驚きの声をあげるほどの加速を見せる。それもそのはず、高性能車の指標となる0-100km/h加速はわずか3.7秒と、エンジン車のスーパースポーツカー並み。わずか一日の試乗でも、EX30 クロスカントリーはさまざまな表情を見せてくれた。
またドライ路面のワインディングロードを走らせると、足まわりのセッティングはかなりスポーティに仕上げられていることがわかる。これまでのボルボらしい、ぬるめの温泉に浸かるようなほんわかした乗り心地ではなく、きびきびと小気味よく走るタイプだ。
インテリアは、外観と同様にシンプルな造形と色使いですっきりとまとめた北欧テイスト。飽きずに長く愛用できそうで、コンパクトではあるけれど奥が深いクルマという印象を受けた。
実は、1年前にも同じコースでEX30の後輪駆動モデルに試乗している。4駆のEX30クロスカントリーよりも雪道では不利なはずだけれど、2駆のEX30は滑りやすい路面でもピタリと安定した走りを見せてくれた。
その秘密は、ESP(エレクトリック・スタビリティ・プログラム)という電子制御式の横滑り防止装置にある。このハイテク装置は、タイヤへの駆動力を調整し、必要があれば自動でブレーキをかけでクルマの動きを安定させる。スピンを防ぐことから、アンチ・スピン・デバイスと呼ぶこともある。
化石燃料を燃やして駆動力に変えるエンジンよりも、電流の流れで駆動力をコントロールするBEVのほうが、ESPのレスポンスが素早く、正確なのだ。ちょこっとタイヤが滑った瞬間にESPがスパッと介入するから、クルマの動きは安定する。後輪駆動でも充分以上の走りを見せたのだから、フルタイム4駆のEX30クロスカントリーが盤石の安定感を披露したのは、ある意味当然のことかもしれない。
ご存知の方も多いように、低温下ではバッテリーの性能は下がるし、エアコンを利かせると電力を消費するから航続距離は短くなる。だからEVは雪道が苦手だと思われるかもしれない。だが、こと滑りやすい路面でのパフォーマンスに関しては、EVがエンジン車を上回るように思える。今回のEX30クロスカントリーでのスノードライブで、BEVは雪道に強いことをあらためて体感した。