世界最大のデザインイベント「ミラノデザインウィーク2025」にて初出展から20年を迎えたレクサス。そこは新しいクルマを展示する場ではなく、ブランドのビジョンをインスタレーションを通じて表現するという、クリエイティブな空間が広がっていた。
クルマと人との関係性を豊かで美しいものに

2025年の出展は、新世代コクピット操作デバイス「ブラックバタフライ」をモチーフに据えたインスタレーション。そのメインが「A-Un」という、クリエイティブエージェンシー「SIX Inc.」の野添剛士氏とデザインスタジオ「STUDEO」の池澤樹氏による巨大アートだ。日本人が大切にする「阿吽の呼吸」にインスピレーションを得て、クルマと人や社会とのつながりがつくり出す新しい世界を表現している。ディスプレイの両端に立った人物の心拍や鼓動を感じ取ることで変わっていくグラフィックは、まるで異次元にいるかのようだ。

「人と人との関係性のように、見えないけれどつながっているものに美を感じるのは、日本人ならではの感覚です。モビリティと人との関係にも、豊かさと美しさをつくりたかった」と野添氏は語る。池澤氏は「人の想像力をかきたてることの大切さを考えました。レクサスはデザイナーもエンジニアもとても繊細な仕事をする。そこに他社との違いがあります」とものづくりの姿勢を作品に映し出していた。

欧州メーカーに比べると歴史の浅いレクサスは、日本の高い技術力に新しい感性を融合することで業界をリードしてきた。ソフトウェアとつながることで急速に進化したクルマ業界に、どんな未来をつくり出していくか。その発想はとてもクリエイティブだ。
レクサスのトップが考える、出展の意義と目指す先
ブラックバタフライによって車内空間の考え方が変わる

「レクサスは、クルマというプロダクトの先にある新しいバリューを追求しています。ソフトウェアの進化によってインタラクティブなデータ連動が可能になり、人とクルマがつながる環境がますます当たり前になるでしょう。丸型のハンドルがブラックバタフライに変わることで、前方の視界が開けて、より直感的な操作ができるようになる。テクノロジーが結びつくことで、車内空間のあり方すら変わる未来が訪れ始めています。

そうした中で、レクサスであることの意味やブランドらしさをどうやってお客様に届けられるかを考えなければならない。だからこそ、クルマ業界以外のところで世の中のトレンドを知ることは大切です。未来に向かってチャレンジを続けるクリエイターたちとともに考え、形にし、意見を交換し合う。それができるミラノデザインウィーク出展には大きな意味があると思っています」
(Lexus International President 渡辺 剛氏)
クルマという特殊な空間を人の感性に近づけたい

「ミラノデザインウィークというデザインの本場で、さまざまなクリエイターの解釈によって「レクサスとは何か」を可視化してきました。これまでは、クルマをより抽象的なオブジェクトとして表現してきましたが、今年はコンセプトカーを入り口で展示し、そこから始まるインスタレーションにしたのが新しい試みです。電子デバイス系の会社が参入してきたここ数年で業界は大きく変化しましたが、レクサスはブランドが始まった1989年以来、人を中心にクルマを開発してきました。

クルマは移動手段でありながら、自分の身をその中に委ねる唯一の工業製品です。スピード感を楽しみたいという期待には応え続けていますが、そんな特殊な空間をテクノロジーの力で、自分の家のように居心地のよいものにしたい。人の感性にどれだけ近づけられるか、という概念を形にできる未来を目指してデザインしていきます」
(Lexus International レクサスデザイン部 部長 須賀厚一氏)

群馬工業高等専門学校での学びを経てトヨタ自動車に入社。Lexus InternationalでLS、UX300eやRZのチーフエンジニアを務め、Lexus Electrified開発部の担当部長に従事。2023年より現職。

1988年の入社より外形デザインを担当。2010年よりレクサスデザイン部。先代LSのメジャーチェンジ開発から現行型LSのフルモデルチェンジまでチーフデザイナーを歴任。2018年より現職。
レクサスインフォメーションデスク
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