大人の男女に流れる微妙な空気と
気分が導く2つの結末に感情移入必至!

映画監督のチュンスは、特別講義を行うために水原(スウォン)にやってくる。関係者の間違いで1日早く到着してしまった彼は、観光名所で魅力的な女性、ヒジョンと知り合う。画家をしているという彼女をコーヒーに誘い、絵を見にアトリエを訪れる。絵について熱く語るチュンスに、ヒジョンは好意を持ち始め、共にした夕食ではいい雰囲気に包まれるが…。本編は、「あの時は正しく 今は間違い」の前編と「今は正しく あの時は間違いだった」の後編に分けられ、1組の男女の出会いと別れを2つの違ったムードで描いている。

2つのストーリーの間に見えるのは、ゆったりとした川の流れにたゆたう草舟のような男女の関係だ。大きな流れに身を任せながらも、水面を割く小さな石や跳ね返る雨の雫で船首をいかようにも変える。本作の見どころは、嵐の中で本当の愛を独白したり、過去の失恋を乗り越えたり…といったものではない。大人の2人が互いに空気を読み、微妙に作用し、されながら進む抑揚のない会話劇につきる。

淡々と進む会話や固定したカメラアングル、最小限の音楽などの演出は、そんな人生の分岐点を際立たせる。それと同時に物語にナチュラルな余白を作り、観ている人は自分の思考を挟み込んでしまう。「俺だったらどうしてた…?」と、恋の駆け引きをしている自分の姿を思い返してしまうのだ。だから、恋に一直線なダメ男のチュンス、そして自分に正直なイケメンのチュンスを見ていて、いろいろな恋を経験してきた40歳男子はちょっと気恥ずかしくなる瞬間があるかもしれない。チュンスを演じるチョン・ジェヨンとヒジョンを演じるキム・ミニが甘〜く繰り出す、まるで終電後のターミナル駅で見られる男女の会話に似た、どこか大胆で、無遠慮で、ピュアな空気に見入ってしまうのだ。

ちなみに、実生活でも恋人であると公言している、世界から注目を集める監督、ホン・サンスと女優のキム・ミニ。今回、初めてタッグを組んだ記念碑的な作品というのもあり、映画を観終わった後は、2人もこんな風に見えない分岐点を越えて恋を実らせたのか…と邪推してしまうが、そう思うととてもハッピーな気分で満たされる。ホン・サンスやキム・ミニが気になった人は過去作の他に、現在公開中の『それから』、『夜の浜辺でひとり』、そして本作『正しい日 間違えた日』、7月14日から公開の『クレアのカメラ』と、4本連続で発表されるホン・サンス監督×キム・ミニ主演作品をチェックしてみるべし。


『正しい日 間違えた日』

監督:ホン・サンス
出演:チョン・ジェヨン、キム・ミニ、コ・アソン、チェ・ファジョン、ソ・ヨンファ、ユン・ヨジョン
2018年6月30日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
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映画『正しい日 間違えた日』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi