今月の時計
IWC
《アイ・ダブリュー・シー ビッグ・パイロット・ウォッチ 43》


Watch

1940年に製作された「ビッグ・パイロット・ウォッチ」の、“大きなケースに大きなリュウズ、シンプルな表示”という特徴を継承しているモデル。これまでは、46.2㎜径という巨大サイズのみだったが、2021年に43㎜径のモデルが登場、収まりがよくなった。カレンダー窓がなく、純粋な計器としての佇まいが強まっている。自社製ムーブメントのキャリバー82100を搭載。自動巻き。SS。ケース径43㎜。¥1,061,500/IWC(IWC シャフハウゼン)


Book

山下 優
(青山ブックセンター本店 店長)

学生時代のアルバイトを経て、青山ブックセンターに入社。2018年から本店の店長を務める。



Drink

成田玄太
(バーテンダー)

人気カフェの店長を経て独立。飲料プロデュース業の傍ら、「Bar werk」のカウンターにも立つ。



Watch

篠田哲生
(ウォッチディレクター)

昨年末に発売した『教養としての腕時計選び』(光文社新書)が、台湾と韓国で翻訳されることに。


「何かに依存せず、自由でありたい」



篠田 今回は男の世界です。「パイロット・ウォッチ」とは、まさにパイロットが計器の一つとして身につけた時計。揺れるコクピットの中でも、時刻を確認できるシンプルな顔が特徴です。

成田 確かに計器風のデザインですね。

篠田 IWCの本社があるのは、スイス北東部のシャフハウゼンという街ですが、ドイツ語圏だからか、どことなくドイツプロダクト的機能美を感じませんか? 例えばかなり大きなリュウズが目立ちますが、これはパイロットグローブを装着した状態でも操作しやすいようにという合理的なデザイン。でもきれいに磨いてあって、キラッと光る。そんなさりげない遊び心も入ってます。

山下 “本気の時計”のオーラがある。パイロットは空の上では孤立無援ですし、自分ですべて決めなきゃいけない。自分のお気に入りのパイロット・ウォッチは、かなり心強いものだったでしょうね。

篠田 パイロットも宇宙飛行士も、アナログウォッチは絶対つけるそうです。システムダウン時の最後の切り札ですね。

山下 なるほど、独立した機械だから、信頼できる道具になるんですね。今回の本は『躁鬱大学』。誰にでもある気分の波を“操縦”する方法を示唆する本です。SNSやサイトのコメントなど、周囲の意見が入ってきやすい時代ですが、人の意見で行動を変える必要はない。そういったメッセージが語られています。

成田 なるほど、心を独立させるってことか。では逆に、お酒はミックスで。「ポーラー ショート カット」は、日本とコペンハーゲンを結ぶ北極回りの飛行航路ができたことを記念し、デンマークでカクテルコンテストが開かれたことに由来します。それぞれに個性のあるお酒をすべて同量で混ぜる珍しいカクテルですが、どれも出しゃばらずにおいしくなる。そのバランスが面白いんですよ。

篠田 結局、ちょうどよいバランスで周囲との距離感をとって、うまく生きていくのがいちばん気楽だね。


ジャケット¥59,400/ヨーク(エンケル) ニット/スタイリスト私物



Drink

チェリー・ヒーリング、ダークラム、ドライベルモット、コアントローという主役級の4つのお酒を、すべて同量(各20㎖)入れ、シェイクして作る「ポーラー ショート カット」。甘くて重たい飲み口なので、大人のデザートカクテルにぴったり。



Book

『躁そう鬱うつ大学
―気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません―』

坂口恭平著
新潮社

建築家であり音楽家でもある坂口恭平は、自分自身が躁鬱病である。その経験をもとに、同じ病気の人が生きていくための技術を伝える意味で書名に“大学”と入れた。治すのではなく、気持ちと上手に付き合うための手引書だ。


OTHER SELECTION

パイロット・ウォッチ・
マークⅩⅧ ヘリテージ

IWCが英国空軍の依頼を受け、1948年に製作したパイロット・ウォッチ「マーク11」の流れをくむ小ぶりな定番モデルが「マーク18」。夜光塗料に日焼けした風合いのベージュを用いることでレトロ感を演出。マットなケースはチタン製だ。自動巻き。Ti。ケース径40㎜。¥594,000/IWC(IWC シャフハウゼン)

パイロット・ウォッチ・
クロノグラフ・スピットファイア

第二次世界大戦時に活躍した英国空軍の戦闘機スピットファイアをイメージ。耐磁性を備えた軟鉄製インナーケースを使うなど、構造でも昔気質を残している。グリーンのテキスタイルストラップは、華やかなアクセントになる。自動巻き。SS。ケース径41㎜。¥770,000/IWC(IWC シャフハウゼン)



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※文中すべて、SS=ステンレススチール、Ti=チタンの略です。

Photos:Yuichi Sugita[POLYVALENT]
Illustration:Crystal
Stylist:Yuta Fukazawa
Composition&Text:Tetsuo Shinoda