今月の時計
TUDOR
《チューダー ブラックベイ P01》


Watch

ロレックスの創立者であるハンス・ウイルスドルフによって、1926年にスタートした「チューダー」。その盾のロゴマークは堅牢性を表している。「ブラックベイ P01」は1960年代に提案したが製品化されなかったミリタリーウォッチを着想源としたもの。経過時間を知るための簡易計器として考えられており、回転ベゼルとそれを固定するヒンジが特徴。自動巻き。SS。ケース径42㎜。¥433,400/チューダー(日本ロレックス/チューダー)


Book

山下 優
(青山ブックセンター本店 店長)

学生時代のアルバイトを経て、青山ブックセンターに入社。2018年から本店の店長を務める。



Drink

成田玄太
(バーテンダー)

人気カフェの店長を経て独立。飲料プロデュース業の傍ら、「Bar werk」のカウンターにも立つ。



Watch

篠田哲生
(時計ライター)

40を超える媒体で時計記事を担当。『教養としての腕時計選び』(光文社新書)が好評発売中。


「この時代に、手にしたいものがある」



篠田 今回は復刻系のミリタリーウォッチ。「チューダー」は各国の海軍や冒険家から愛されたタフウォッチの名門で、「ブラックベイ P01」は1960年代にアメリカ海軍に提案したけど実現しなかった幻のモデルを甦らせたものです。

成田 かなりいかついデザインですね。

篠田 回転式のベゼルが衝撃でずれないように、12時位置のヒンジでガチッと固定するので、この迫力になりました。実は今、時計業界では新興勢力がどんどん勢いを増している。だから老舗ブランドは歴史を語り、品質やデザインの正統性をしっかり打ち出すようにしている。ミリタリーウォッチを納入できたのは実力派ブランドばかりですから、そういった物語がきいてくるんです。

成田 時計と軍隊には深い関係がありますが、実はカクテルも同様で、軍隊由来のものが多いんです。例えば「アーミー」。ジンベースの強いカクテルですが、これは陸軍対海軍のアメフトの試合前に、気合を入れるために飲んでいたそうで、1890年代から愛されています。

山下 荒々しいお酒ですけど、時代を超えて受け継がれるものっていいですよね。この時計なんて、存在しなかったものを、わざわざ図面などを持ち出して再創造したんですよね。つまり時代に選ばれたってこと。実は本でも最近、話題の復刊があるんです。『ぼく自身のノオト』って本で、もともとはアメリカで1970年に出版されました。どこの誰でもない若者が日常の中で感じている、普遍的な不安やモヤモヤを綴っています。こういった感情や悩みって、どれだけ時代が変化してもなくなることはない。だから今でも評価されるんですよね。

篠田 むしろSNSなどで他人の幸せを浴びせかけられる現代のほうが、自分に向き合う悩みが増えているのかも。これもまた時代が求めた結果なんですね。先行きが不透明な時代だからこそ、こういう迫力ある時計をつけ、強いカクテルをぐっと飲んで、力強く前進しないとね。



ジャケット¥37,400・シャツ¥28,600/ウィーウィル パンツ¥42,900/スタジオ ニコルソン(キーロ)



Drink

ジン(45㎖)とスイートベルモット(15㎖)をシェイクしてつくる「アーミー」は、アルコール度数は高めだが、とても香りが豊かなカクテル。決戦前に飲まれてきたお酒なので、大切なデートや食事会の前など、気合を入れたいときに飲みたい。



Book

『ぼく自身のノオト』
ヒュー・プレイサー著 きたやまおさむ訳
創元社

青年期の普遍的な悩みを綴り、世界で500万部を売り上げた心理エッセイが復刊。日本では1979年に初版が発行された。初版から翻訳を担当してきたきたやまおさむ(北山修。元ザ・フォーク・クルセダーズ、精神科医)の名訳でも話題に。


OTHER SELECTION

ブラックベイ ブロンズ

視認性に優れる大型のスノーフレーク針が特徴のダイバーズウォッチ。ケース素材はかつて潜水器具にも用いられていたブロンズで、使っていくうちにどんどん酸化して色が深まってくる。自動巻き。ブロンズ。ケース径43㎜。¥449,900/チューダー(日本ロレックス / チューダー)

ブラックベイ クロノ S&G

プッシュボタンやリュウズとベゼルにイエローゴールドを用いた、コンビスタイルのクロノグラフ。ツーカウンター式のデザインは1960年代に流行したスタイルであり、程よくレトロ感を楽しめる。自動巻き。SS。ケース径41㎜。¥627,000/チューダー(日本ロレックス / チューダー)


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※文中すべて、SS=ステンレススチールの略です。

Photos:Yuichi Sugita[POLYVALENT]
Illustration:Crystal
Stylist:Yuta Fukazawa
Composition&Text:Tetsuo Shinoda