今月の時計
VACHERON CONSTANTIN
《ヒストリーク・アメリカン1921》


Watch

1755年に創業したヴァシュロン・コンスタンタンは、スイス時計の中心都市であるジュネーブを代表する名門。この地に伝わる伝統的な時計技法や仕上げを取り入れていることを証明する「ジュネーブ・シール」を取得しており、格式高い時計作りを継承している。「ヒストリーク・アメリカン 1921」の優美なクッションケースは、当時流行したアール・デコ様式を取り入れたもの。文化の薫る時計だ。手巻き。18KPG。ケース径36.5㎜。¥3,140,000/ヴァシュロン・コンスタンタン (左ページ)ジャケット¥69,000/ラ ファーボラ ニット¥26,000/グラフペーパー パンツ¥45,000/ヘリル(アンシングス)


Book

山下 優
(青山ブックセンター本店 店長)

学生時代のアルバイトを経て、青山ブックセンターに入社。2018年から本店の店長を務める。



Drink

成田玄太
(バーテンダー)

人気カフェの店長を経て独立。飲料プロデュース業の傍ら、「Bar werk」のカウンターにも立つ。



Watch

篠田哲生
(時計ライター)

40を超える媒体で時計記事を担当している時計ライター。スイスでの時計取材の経験も豊富。


「この時代の文化を知っているのが嗜み」



篠田 これはアメリカ市場に向けて1920年代に製作された時計を復刻したもの。サイズやムーブメントは進化しましたが、スタイルは変わりません。この時代のアメリカといえば「狂騒の’20年代」と呼ばれ、ジャズやファッションなど、新しい文化が花開きましたよね。

山下 まさに、フィッツジェラルドが描いた『偉大なギャツビー』の世界です。しかもダイヤルの表示が斜めにずれていますよね。熱狂の中にいながらも、どこか世の中をシニカルに斜めに見ていたフィッツジェラルドですから、斜めの時計にも興味をもちそう。

成田 でもどうして、斜めなんですか?

篠田 これはドライバーズウォッチでもあるんです。時計を手首の内側につけて車のハンドルを握ると、表示が正しく見えるんです。ちょうど自動車文化が花開いた時代でもありますからね。

山下 本にも、華やかなライフスタイルの象徴として自動車が登場します。彼らはこういう時計をつけていたんですね。

成田 約100年前のライフスタイルを描いた本ですが、この時計を通すと当時の雰囲気をリアルに感じることができますね。合わせるカクテルは、乗り物×時計ということで「サイドカー」にしてみました。口当たりはよくて飲みやすいけど、アルコール度数は高いので“レディーキラー”と呼ばれています。寒くなるほど茶色系のお酒が人気になりますから、「サイドカー」は秋におすすめのカクテルです。

篠田 なるほど、遊び慣れた大人のお酒ってことですね。これもまた、ギャツビーの世界。この時代の文化や風俗って、なんかカッコいいですよね。

山下 この本は1925年に出版されましたが、翻訳は時代に合わせて変化しています。この時計も現代に合わせて進化しているんですよね。だから古くならないし、今でも惹かれるんだと思います。

篠田 優雅な大人を目指すなら、この時代を知らないとダメってことなのかな。



Drink

バイクのサイドカーにちなんで命名された人気カクテル。ブランデー(30㎖)、コアントロー(15㎖)、レモン果汁(15㎖)をシェイカーに入れて氷とシェイク。脚付きのカクテルグラスに注ぐ。口当たりはよいが、油断しているとしっかり泥酔する。



Book

『偉大なギャツビー』
F.スコット・フィッツジェラルド著 
野崎 孝訳 集英社

高層ビルが建築され、未曽有の繁栄を迎えていた1920年代のニューヨークとその郊外を舞台にした小説。地方出身の若者ニックのシニカルな目線を通して描かれる上流階級のライフスタイルは、今も憧れの世界。アメリカ文学の最高傑作の一つ。


OTHER SELECTION

ヒストリーク・トリプルカレンダー 1942

1942年製モデルを復刻。月、曜日を小窓式、日付は針式というトリプルカレンダー。レトロなインデックスを邪魔しない繊細な細針やゴドロンと呼ばれるケースの縞装飾など細部まで美しい。手巻き。SS。ケース径40㎜。¥2,260,000/ヴァシュロン・コンスタンタン

ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955

1955年に誕生した手巻き式クロノグラフを復刻。牛の角を思わせるラグが特徴。ケースバックからは、手仕事の仕上げが美しい自社製ムーブメント、キャリバー1142を鑑賞できる。手巻き。SS。ケース径38.5㎜。¥4,480,000/ヴァシュロン・コンスタンタン


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※文中すべて、SS=ステンレススチールの略です。

Photos:Yuichi Sugita
Illustration:Crystal
Styling:Yuta Fukazawa
Composition&Text:Tetsuo Shinoda