27 Sep.

「“タンク”はどこか抽象的で
造形物としても魅力を感じます」

石上 純也 | 建築家

「2018年にパリのカルティエ現代美術財団にて“FREEING ARCHITECTURE”という個展を開催しました。期間中に講演会があったのですが、それがちょうど僕の誕生日と重なって、館長のエルベ・シャンデスが『渡したいものがある』とこの“タンク”をプレゼントしてくれたんです」

「エルベとの交流は10年ほど前からはじまっていたので親密になっていましたし、展覧会がはじまると、建築や美術に興味がある人だけでなく、子どもから高齢の方まで予想以上に来訪者が多く、彼もうれしかったのでしょう。僕は時計を着ける習慣がなかったのですが、“タンク”は数少ない好きな時計でしたので、それからは着けるようになりました。今日のスーツのようなクラシックな装いだけでなく、普段僕が着ている古着のGジャンにも合うのが素晴らしい。形や佇まいはもちろん“タンク”そのものに歴史があるから、力がありますよね」

「“タンク”の形はもちろん、スクエアの目盛りやローマ数字が盤面に沿って傾斜して広がるグラフィックが構成的で、建築に近い造形を感じます。カルティエは財団で先進的な作品をコレクションするなど芸術に理解がある一方で、商業的な部分ではものづくりに純粋性を保っている稀有なブランドだと思います。パビリオン・トウキョウ2021でkudan houseの庭園に木陰雲を制作する際にもサポートをいただき、カルティエとのいい関係が続いているのはありがたいことです。エルベから贈られた“タンク”は気づけばもう3年が経っていました。そろそろストラップを交換したり、メンテナンスをしたいと思っています」

JUNYA ISHIGAMI

東京藝術大学で建築を学び、SAANAを経て2004年に独立。2010年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞のほか、受賞歴も多数。2000年代を代表する建築家として、世界各国でプロジェクトを展開している。

Photos:Takahiro Idenoshita
Text:Hisami Kotakemori