2019.09.22

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.20 キジマ タカユキとヨウジヤマモト|2015年11月号掲載

8月の後半になると、店頭には秋冬物がズラリと並ぶ。撮影でも猛暑の中、モデルに真冬のコートを着せたりして秋冬物に包囲されるので、暑いのに夏物を買う意欲は完全に失せる。8月は夏の哀愁に満ちる月である。

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この夏は休暇をとらなかった。これまで、8月に猛烈に働いた記憶はあまりない。スケジュールを上旬に詰め込み、後半は休暇をとってゆっくりするというのが8月の過ごし方だった。が、今年は違う。お盆も普通に働いていた。なぜにこんなに働いているのだろうと思うくらい働いた。



8月に入ると、まずは石川県&富山県へロケに。その後は京都へ行き、そして下旬には大分県へ撮影に出かけた。海外へは行かず、ひたすら日本各地を駆けずり回った。それも古い街並みばかりを追いかけて。城下町、武家屋敷、回遊庭園、枯山水、石畳、土塀、瓦、茅葺き屋根…等々、日本再発見なロケをしまくったのである。



サンセットビーチや海水浴やプールとは無縁な夏。土塀の周りを汗をかきながら歩いていると、昔はこの道を、夏の暑さなどものともせずに、武士たちが凜と歩いていたに違いない、などと勝手な妄想が首をもたげる。時空を超えた、そんな勘違い気分に浸るのも結構楽しい。



が、忙中閑あり。ホテルオークラの〈オーキッドバー〉でベリーニをやるのが今年の僕の休暇代わりであった。あの空間がなくなってしまうのを惜しみながら飲むベリーニは格別であった。が、それにしても寂しい。



うまい酒の飲める素敵な空間に、とびきりおしゃれをして出かけるのが僕の心身健康法である。だから、ホテルオークラ本館がなくなることは非常に残念であり、この夏は、後悔のないように時間の許す限り通った。後年、2015年の夏の思い出として残るのは、確実にホテルオークラのオーキッドバーで飲んだベリーニである。



さて、夏のロケには日焼けがつきものである。ヘタに現場焼けをすると、スタイリストとしての説得力がなくなる気がする。「鼻毛が出てる人は、何を言っても信用されない」の法則と似ている。なのに僕はよく日焼け止めを塗り忘れ、真っ赤な鼻になっていることが多い。なんてこった。とりあえずつばの大きい帽子は夏の必需品だろう。



今年はクールな〈ボルサリーノ〉ではなくて、夏休み少年のような〈キジマ タカユキ〉の帽子を愛用した。ひもがポイントである。風に飛ばされることを気にしなくていいのは、ロケ現場においては最高であった。そして最近マイブームなのが〈ヨウジヤマモト〉。襟の立ち具合がナイスなシャツコートを買った。シワクチャにしてもなお張りのある素材感も気に入っている。



〈ヨウジヤマモト〉の服には、どこか哀愁漂う男のイメージがある。僕は哀愁とは無縁の男だが、カラオケでは哀愁漂う歌を選ぶことが多い。つまり、ないものねだりで哀愁のある男を目指しているのだ。このコートには、〈ケアレーベル〉とコラボレーションしたリジッドジーンズを合わせることが多い。



〈ケアレーベル〉とのコラボジーンズは、このリジッド以外にホワイトもあり、シルエットは同じだが素材が別で、ホワイトの生地は日本製でストレッチがきいている。リジッドのほうはイタリア製の生地で、カジュアルというよりはドレスな風合い。



どちらもスラックス気分ではくのがポイントだ。リジッドはセンタープレスを入れてはくのもよし。靴はスニーカーよりも、〈パレス〉のローファーを合わせるのが最近の好みである。休暇なき夏は駆け足で過ぎ去った。



(左)久々に〈ヨウジヤマモト〉の服を購入。しわくちゃな質感のシャツコートだが、これをキチッとボタンを留めて着るのが新鮮。(中)〈ケアレーベル〉とのコラボデニム。ポケットの裏地には、この連載でもお馴染みのサラ・グインドンのイラスト入り。(右)夏休みの虫とり少年がイメージ。丸めて携帯しても、シワがいい感じに出てベリーナイス。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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